支払資金
社会福祉法人における支払資金とは?
現預金だけではありません。
定義や範囲、資金収支計算書とのつながりについてご紹介いたします。
支払資金の定義
支払資金について、社会福祉法人会計基準第二節に次のように定義されています。
(資金収支計算書の内容)
第十二条 資金収支計算書は、当該会計年度における全ての支払資金の増加及び減少の状況を明瞭に表示するものでなければならない。
資金収支計算書とは、企業会計におけるキャッシュフローに似ており、資金の流れ(増減)を表します。
(資金収支計算書の資金の範囲)
第十三条 支払資金は、流動資産及び流動負債(経常的な取引以外の取引によって生じた債権又は債務のうち貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するものとして固定資産又は固定負債から振り替えられた流動資産又は流動負債、引当金及び棚卸資産(貯蔵品を除く。)を除く。)とし、支払資金残高は、当該流動資産と流動負債との差額とする。
厚生労働省:社会福祉法人会計基準(e-Gov)
支払資金の範囲
支払資金の範囲は、上記第十三条より、次の通りとなります。
流動資産と流動負債の差額である
一年基準により固定資産振替えられた固定資産または固定負債から振替えられた流動資産・流動負債を除く
引当金を除く
棚卸資産(貯蔵品を除く)を除く =貯蔵品は支払資金
資金収支計算書「当期末支払資金残高」が、支払資金の金額となりますが、
貸借対照表からも支払資金を計算することができます。
支払資金の計算方法
貸借対照表から支払資金を計算します。
大きく言うと
流動資産ー流動負債
です。
前述した4つのポイントを踏まえた具体的な計算は次の通りです。
① 流動資産の「徴収不能引当金」の金額を足す
(帳簿上資産からマイナスされているため、そのマイナスの数値を戻す)
② 流動資産の「貯蔵品以外の棚卸資産」の金額を引く
(貯蔵品は支払資金にあたるので、貯蔵品以外を除外する
具体的には「医薬品」、「診療・療養費等材料」、「給食用材料」、「商品・製品」、
「仕掛品」、「原材料」)
③ 流動資産の「一年以内・・・」の科目の金額を引く
(固定資産から振替えられた流動資産を除く。実態は固定資産であるため)
④ 流動負債の合計金額を引く
⑤ 流動負債の「…引当金」の金額を足す。
(賞与引当金などが該当する。引当金は債務確定ではなく、見込計上のため)
⑥ 流動負債の「一年以内…」の金額を足す
(固定負債から振替えられた流動負債を除く。実態は固定負債であるため)
上記の計算の結果、貸借対照表より算出された金額を「支払資金」といい、資金収支計算書の末尾の「当期末支払資金残高」と必ず一致します。
貸借対照表
資金収支計算書
流動資産の部
固定資産の部
流動負債の部
固定負債の部
計算された支払資金
純資産の部
当期末支払資金残高
収入
事業活動資金収支差額
支出
収入
支出
施設整備等資金収支差額
収入
その他の活動資金収支差額
支出
当期資金資金収支差額合計
前期末支払資金残高
一致
流動資産と流動負債の差額に、足りない調整を加えるというイメージです。
ここが一致していないと計算書類のどこかに誤りがあると言えます。
支払資金の概念を理解していると、何か違和感に気付けたり、正しい計算書類の作成に役立てることができます。